オシロスコープ入門¶
目次¶
はじめに¶
オシロスコープは電気信号の波形を視覚的に観測できる測定器です。組み込みシステムの開発において、信号の品質確認やデバッグに不可欠なツールとなります。本講座では、ソフトウェアエンジニアがオシロスコープを効果的に使用するために必要な基礎知識を学びます。
1. オシロスコープの基本¶
1.1 オシロスコープとは¶
オシロスコープの基本的な機能と特徴を図で示します:
graph TD
A[オシロスコープ] --> B[時間軸表示]
A --> C[電圧軸表示]
A --> D[トリガー機能]
B --> E[水平軸制御]
C --> F[垂直軸制御]
D --> G[波形の安定表示]
1.2 主要な部分と機能¶
- 表示部
- 波形表示画面
- メニュー表示部
- 測定値表示部
- 操作部
- 垂直軸(電圧)制御
- 電圧レンジ
- 位置調整
- カップリング切替
- 水平軸(時間)制御
- 時間レンジ
- 位置調整
- トリガー制御
- トリガーソース選択
- トリガーレベル調整
- トリガーモード選択
2. 基本操作の解説¶
2.1 電圧軸の調整¶
電圧軸の調整に関する重要なポイント:
flowchart LR
A[電圧レンジ選択] --> B[波形が画面内に収まるように]
B --> C[できるだけ大きく表示]
C --> D[分解能の最適化]
2.2 時間軸の調整¶
波形の周期に応じた適切な時間軸の設定方法:
- 基本的な考え方
- 観測したい現象の時間幅を把握
- 画面内に2~3周期が表示されるように設定
- 必要に応じて詳細な部分の拡大
2.3 プローブの取り扱い¶
プローブの正しい使用方法:
- プローブの種類
- 10:1プローブ
- 1:1プローブ
- 測定時の注意点
- グランド接続の重要性
- プローブの補正方法
- 帯域幅の考慮
3. 波形の見方¶
3.1 基本的な波形パターン¶
主要な波形パターンとその特徴:
graph LR
A[基本波形] --> B[矩形波]
A --> C[正弦波]
A --> D[三角波]
A --> E[パルス波]
B --> F[デューティ比]
B --> G[立ち上がり/立ち下がり時間]
C --> H[振幅]
C --> I[周波数]
3.2 波形の評価ポイント¶
- 波形の基本パラメータ
- 周期/周波数
- 振幅
- デューティ比
- 立ち上がり/立ち下がり時間
- 波形の品質評価
- オーバーシュート/アンダーシュート
- リンギング
- ノイズ
4. トリガーの考え方¶
4.1 トリガーの基本¶
トリガーの基本的な仕組み:
sequenceDiagram
participant Input as 入力信号
participant Trigger as トリガー回路
participant Display as 表示系
Input->>Trigger: 信号入力
Trigger->>Trigger: トリガー条件判定
Trigger->>Display: 表示開始信号
Display->>Display: 波形描画
4.2 トリガーの種類と設定¶
- エッジトリガー
- 立ち上がりエッジ
- 立ち下がりエッジ
- その他のトリガー
- パルス幅トリガー
- パターントリガー
- 時間指定トリガー
5. 実践的な波形観測¶
5.1 クロック信号の観測¶
クロック信号観測のポイント:
- 確認項目
- 周波数の正確性
- デューティ比
- 立ち上がり/立ち下がり時間
- ジッタ
- 測定手順
- プローブの選択と補正
- トリガー設定
- 時間軸/電圧軸の最適化
5.2 データ信号の観測¶
デジタル信号観測のポイント:
- 信号品質の評価
- アイパターン
- スルーレート
- オーバーシュート
- ノイズ対策
- プローブの適切な接地
- 帯域制限の活用
- アベレージング機能の使用
6. まとめと確認問題¶
6.1 重要ポイントの整理¶
- オシロスコープの基本機能
- 電圧軸/時間軸の設定
- トリガー機能の活用
- プローブの正しい使用
- 波形観測の基本手順
- 適切な設定値の選択
- 波形の品質評価
- 測定結果の解釈
6.2 確認問題¶
-
オシロスコープの垂直感度を2V/divに設定したとき、画面上の波形が3目盛の振幅を持っている場合、実際の信号の振幅はいくらですか?
-
次の波形から周波数を求めてください:
-
トリガーレベルを設定する際の基本的な考え方を説明してください。
-
プローブの10:1と1:1の違いについて説明してください。
6.3 実習課題¶
- 1kHzの矩形波を観測し、以下の項目を測定してください:
- デューティ比
- 立ち上がり時間
-
オーバーシュート量
-
クロック信号を観測し、以下の項目を確認してください:
- 周波数の確認
- ジッタの測定
- 信号品質の評価
補足資料¶
オシロスコープの基本設定早見表¶
| 観測対象 | 推奨時間軸 | 推奨電圧軸 | トリガー設定 |
|---|---|---|---|
| クロック信号 | 周期の2-3倍が画面内に収まるように | 振幅が画面の60-80%程度 | 立ち上がりエッジ |
| デジタル信号 | データレートに応じて調整 | 論理レベルに応じて調整 | データパターンに応じて |
| アナログ信号 | 信号の変化が観察できる範囲 | S/N比を考慮して最適化 | 信号の特徴に応じて |
トラブルシューティングガイド¶
- 波形が表示されない場合
- トリガー設定の確認
- プローブの接続確認
- 垂直軸/水平軸の設定確認
- 波形が不安定な場合
- トリガーレベルの調整
- トリガーモードの変更
- プローブの接地状態確認
- ノイズが多い場合
- 帯域制限の使用
- アベレージング機能の活用
- プローブの配置見直し