6日目:マイコン周辺回路¶
1. マイコンの基本構成¶
1.1 マイコンの構成要素¶
マイコン(マイクロコントローラ)は以下の主要な要素で構成されています:
- コア部分
- CPU(中央演算処理装置)
- メモリ
- フラッシュメモリ(プログラム格納用)
- SRAM(作業用メモリ)
- 周辺機能
- I/Oポート
- タイマー
- 通信インターフェース(UART、SPI、I2Cなど)
- A/D変換器
- 電源関連
- 電源制御回路
- リセット回路
graph TD
A[マイコン] --> B[コア部分]
A --> C[周辺機能]
A --> D[電源関連]
B --> B1[CPU]
B --> B2[メモリ]
B2 --> B2a[フラッシュメモリ]
B2 --> B2b[SRAM]
C --> C1[I/Oポート]
C --> C2[タイマー]
C --> C3[通信IF]
C --> C4[A/D変換器]
D --> D1[電源制御回路]
D --> D2[リセット回路]
1.2 データシートの読み方¶
マイコンのデータシートは通常、以下のような構成になっています:
- 概要
- 製品の特徴
- ブロック図
- ピン配置
- 電気的特性
- 絶対最大定格
- 推奨動作条件
- DC特性
- AC特性
- 機能説明
- 各ペリフェラルの詳細
- レジスタマップ
- アプリケーション情報
- 参考回路
- 実装上の注意事項
2. 電源回路の詳細¶
2.1 電源の種類¶
マイコンで使用される主な電源の種類:
- VDD(メイン電源)
- 通常3.3Vまたは5V
- コアロジック動作用
- AVDD(アナログ電源)
- A/D変換器用
- ノイズの影響を受けやすいため分離
- VDDIO(I/O電源)
- 外部インターフェース用
- 異なる電圧のデバイスと接続する場合に使用
2.2 電源回路の構成¶
基本的な電源回路の構成例:
graph LR
A[入力電源] --> B[レギュレータ]
B --> C[VDD]
B --> D[デカップリングコンデンサ]
D --> E[マイコン]
F[フェライトビーズ] --> G[AVDD]
G --> H[アナログ用デカップリングコンデンサ]
2.3 デカップリングコンデンサ¶
デカップリングコンデンサの重要性:
- 電源ノイズの除去
- 瞬時的な電流要求への対応
- 配置の注意点
- マイコンのVDD/VSS端子の近くに配置
- 配線を短くする
- 推奨値は通常0.1μF
3. リセット回路の役割¶
3.1 リセットの種類¶
マイコンで使用される主なリセット:
- パワーオンリセット(POR)
- 電源投入時の自動リセット
- 電源電圧の立ち上がりを監視
- 外部リセット
- リセットピンによる手動リセット
- デバッグ用途でも使用
- ウォッチドッグリセット
- プログラムの暴走検出用
- 定期的なリフレッシュが必要
3.2 リセット回路の構成¶
基本的なリセット回路:
graph TD
A[電源入力] --> B[電圧検出IC]
B --> C[リセット信号]
D[リセットスイッチ] --> C
C --> E[マイコンのRESET端子]
F[プルアップ抵抗] --> C
3.3 リセット時の動作¶
-
リセット信号がアクティブになると:
- すべてのI/Oがデフォルト状態に
- 内部レジスタが初期化
- プログラムカウンタがリセットベクタにセット
-
リセット解除後:
- リセットベクタから実行開始
- 初期化ルーチンの実行
- メインプログラムへの分岐
4. 実習:開発ボードの観察と動作確認¶
4.1 開発ボードの観察¶
確認すべき項目:
- 電源関連
- レギュレータの確認
- デカップリングコンデンサの位置
- 電源LEDの動作確認
- リセット関連
- リセットスイッチの位置
- リセット回路の構成部品
- デバッグ関連
- デバッグコネクタの位置
- JTAGまたはSWDの接続
4.2 電源電圧の測定実習¶
測定のポイント:
- 測定箇所
- VDD端子
- AVDD端子
- VDDIO端子
- 測定時の注意事項
- GNDの取り方
- プローブの扱い方
- 測定値の読み方
4.3 チェックリスト¶
開発ボード動作確認時のチェック項目:
- 電源投入時の確認
- 電源LEDの点灯
- 電圧の安定性
- 突入電流対策の確認
- リセット動作の確認
- リセットスイッチの動作
- リセット後のLED点滅
- デバッガの認識
5. 理解度確認¶
5.1 確認テスト¶
以下の項目について説明してください:
- マイコンの基本構成要素とその役割
- デカップリングコンデンサの必要性
- リセット回路の種類と動作
- 電源回路設計時の注意点
- 開発ボードでの電圧測定手順
5.2 実践課題¶
-
データシートを読んで以下を特定:
- 推奨電源電圧
- 最大消費電流
- デカップリングコンデンサの推奨値
- リセット端子の特性
-
開発ボードで以下を実施:
- 各電源電圧の測定
- リセット信号の波形観察
- 電源投入時の電圧立ち上がり確認
参考資料¶
- マイコンメーカーのデータシート
- アプリケーションノート
- 開発ボードのユーザーマニュアル
おわりに¶
本講座では、ソフトウェアエンジニアとして必要なマイコンの周辺回路に関する基礎知識を学びました。これらの知識は、ハードウェアエンジニアとの協業や、製品開発における問題解決に役立ちます。実際の開発では、本講座で学んだ内容を基に、さらに詳細なデータシートの読解や実装上の注意点の理解を深めていくことが重要です。